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久しぶりに漱石の『硝子戸の中』を紹介します。

今日は、その十八で、漱石を訪ねてきたの話です。

硝子戸の中』のは、漱石の家を、突然、全く知らないが訪ねてきて、相談を持ちかけるという話ですが、今日のは、一応、漱石の知り合いのようです。
※『硝子戸の中・六』:2007年12月11日の日記
 『硝子戸の中・七』:2007年12月12日の日記
 『硝子戸の中・』:2007年12月13日の日記

また、その相談ごともそれほど深刻なものではないようで、は言いたいことだけ言うとあっさり帰っていってしまいます。


硝子戸の中』(夏目漱石)

十八

 私の座敷へ通されたある若い女が、「どうも自分の周囲がきちんと片づかないで困りますが、どうしたら宜しいものでしょう」と聞いた。
 この女はある親戚の宅に寄寓しているので、そこが手狭な上に、子供などが蒼蠅いのだろうと思った私の答は、すこぶる簡単であった。
「どこかさっぱりした家を探して下宿でもしたら好いでしょう」
「いえ部屋の事ではないので、頭の中がきちんと片づかないで困るのです」
 私は私の誤解を意識すると同時に、女の意味がまた解らなくなった。それでもう少し進んだ説明を彼女に求めた。
「外からは何でも頭の中に入って来ますが、それが心の中心と折合がつかないのです」
「あなたのいう心の中心とはいったいどんなものですか」
「どんなものと云って、真直な直線なのです」
 私はこの女の数学に熱心な事を知っていた。けれども心の中心が直線だという意味は無論私に通じなかった。その上中心とははたして何を意味するのか、それもほとんど不可解であった。女はこう云った。
「物には何でも中心がございましょう」
「それは眼で見る事ができ、尺度で計る事のできる物体についての話でしょう。心にも形があるんですか。そんならその中心というものをここへ出して御覧なさい」




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kinkun

Author:kinkun
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