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在俗の名は慶滋の保胤

最後の章は、姫君も、そしても登場しない、後日談です。
では、なぜ芥川はこの章を書いたのでしょうか。
私は、法師に、「あれは極楽も地獄も知らぬ、腑甲斐ない女の魂でござる。という一言を言わせたかったためではないかと思います。
そしてこれは、言うまでもなく両親乳母と自分の周りのものに運命を委ね続けて死んでしまった姫君に対する非難です。
ただ、私は、少し姫君に厳しすぎるのではと思います。


『六の宮の姫君』(芥川龍之介)



それから何日か後の月夜、姫君に念仏を勧めた法師は、やはり朱雀門の前の曲殿に、破れ衣の膝を抱へてゐた。
すると其処へ侍が一人、悠々と何か歌ひながら、月明りの大路を歩いて来た。
侍は法師の姿を見ると、草履の足を止めたなり、さりげないやうに声をかけた。

「この頃この朱雀門のほとりに、女の泣き声がするさうではないか?」

法師は石畳みに蹲まつた儘、たつた一言返事をした。

「お聞きなされ。」



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【深遠な疑問ですね・・・】
はじめまして、時々拝読しておりましたが、はじめてコメントを入れさせていただきます。
慶滋保胤と六の宮の姫君を検索して、この記事に出会いました。
芥川龍之介は今昔物語集の「六宮姫君夫出家語」と「造悪業人最後念仏往生語」から小説を書いたと言われているのですが、「内記慶滋ノ保胤出家語」は巻十九本朝仏法の三話目で六ノ宮の二つ前にあります。関係があるのかなぁとも考えておりました。
今昔物語の中で保胤は、犬や牛にまで手をあわせてしまうような慈悲深い人物という設定ですから、「どんな人間でも慈悲をかけて救う」のではないか、などども思っております。一言では表現できない問題だとは思うのですが、私もご指摘の疑問をずっと考えているところでしたのでつい長くなり、大変失礼致しました(ちょっと緊張しています)。
また、お邪魔することもあるかと思います。何卒よろしくお願いいたします。
【芥川の意図】
丹桂さん、コメントありがとうございます。
私も時々『無弦弓』を拝見させていただいており、丁寧な解読と深い分析に感服しています。
この直前の『六の宮の姫君(5)」で、芥川はなぜ、「今昔物語」巻十五の「造悪業人最後唱念仏往生語第四十七」」をこのように変形させたのでしょうか。そして、「今昔物語」巻十九の「六宮姫君夫出家語第五」にもないこの部分を付け加えたのでしょうか。
私には、芥川がこの中で描く慶滋の保胤と、今昔物語で描かれる慶滋の保胤が別の人物のことを描いているようにさえ見えてきていました。
でも、御説を伺い、そういう考え方もできると気付きました。ありがとうございます。
しかし、私が女性に甘いのかもしれませんが、私には、この結末は姫君に厳しすぎるように思えてなりません。
【芥川の意図は・・】
過分なお言葉を頂き恐縮いたしております。
>姫君に厳しすぎるように思えてなりません
ほんとうですね、第四十七話では悪党ですら成仏できるのに、姫には冷たすぎるとも思いました。
が確か法然聖人が教えを広めるまで、女性は成仏できないといった話も有り、
そう云うところも加味されているのかもしれません。
当時の状況や今昔物語のテイストを最大限に生かした儘で、この六章を附加し、
読者をもうながしながら鎮魂を願ったのではないかとも思えました。
(物語の中だけ、作者の力だけで成仏させない配慮でしょうか)
私は芥川作品については読んでいないものの方が多いのでちゃんと理解できて
いないかも知れません。きんくんさんの読書量には唯々感嘆いたしております。
ふとした問いにご丁寧に返信頂き、今までとは違った見方で物語を考え直すことができました、
本当にありがとうございました。
【近代人と信仰】
丹桂さん、再度のコメントありがとうございます。 何か往復書簡のようで楽しいです。

六の宮の姫君』で、「芥川は姫君に自分自身を投影し、信仰心を失った近代人の死への怯え」を表現したと分析されていることが多いようです。
私は、基本的には今昔物語集のこの二つの話を芥川が純粋に気に入ったのでこの作品が生まれたと考えていますので、あまりそういう分析は好きではありません。
しかし、この最後の部分には、信仰にすがりたいけどすがりきれない近代人の心が見えるような気もします。

『無弦弓』ももうすぐこの場面ですね。楽しみにしています。
【No title】
北村薫の「六宮の姫君」を読まれましたか?未読であれば、是非・・・。
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kinkun

Author:kinkun
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