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「何も、――何も見えませぬ」


やっと、姫君に出会ったなのに、変わり果てた姫君を見て、声をかけるのをためらいます。

しかしその姫君に違ひない事は、一目見ただけでも十分だつた。男は声をかけようとした。が、浅ましい姫君の姿を見ると、なぜかその声が出せなかつた。

その男の気持ちは、なんとなくわかるような気がします。
しかし、姫君の声を聞き、は思わず名前を呼びます。

男はこの声を聞いた時、思はず姫君の名前を呼んだ。


『六の宮の姫君』(芥川龍之介)



男は翌日から姫君を探しに、洛中を方々歩きまはつた。
が、何処へどうしたのか、容易に行き方はわからなかつた。

すると何日か後の夕ぐれ、男はむら雨を避ける為に、朱雀門の前にある、西の曲殿の軒下に立つた。
其処にはまだ男の外にも、物乞ひらしい法師が一人、やはり雨止みを待ちわびてゐた。
雨は丹塗りの門の空に、寂しい音を立て続けた。
男は法師を尻目にしながら、苛立たしい思ひを紛らせたさに、あちこち石畳みを歩いてゐた。
その内にふと男の耳は、薄暗い窓の櫺子の中に、人のゐるらしいけはひを捉へた。
男は殆何の気なしに、ちらりと窓を覗いて見た。



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kinkun

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

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