fc2ブログ
2024 / 02
≪ 2024 / 01   - - - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 - -  2024 / 03 ≫

「何も、――何も見えませぬ」


やっと、姫君に出会ったなのに、変わり果てた姫君を見て、声をかけるのをためらいます。

しかしその姫君に違ひない事は、一目見ただけでも十分だつた。男は声をかけようとした。が、浅ましい姫君の姿を見ると、なぜかその声が出せなかつた。

その男の気持ちは、なんとなくわかるような気がします。
しかし、姫君の声を聞き、は思わず名前を呼びます。

男はこの声を聞いた時、思はず姫君の名前を呼んだ。


『六の宮の姫君』(芥川龍之介)



男は翌日から姫君を探しに、洛中を方々歩きまはつた。
が、何処へどうしたのか、容易に行き方はわからなかつた。

すると何日か後の夕ぐれ、男はむら雨を避ける為に、朱雀門の前にある、西の曲殿の軒下に立つた。
其処にはまだ男の外にも、物乞ひらしい法師が一人、やはり雨止みを待ちわびてゐた。
雨は丹塗りの門の空に、寂しい音を立て続けた。
男は法師を尻目にしながら、苛立たしい思ひを紛らせたさに、あちこち石畳みを歩いてゐた。
その内にふと男の耳は、薄暗い窓の櫺子の中に、人のゐるらしいけはひを捉へた。
男は殆何の気なしに、ちらりと窓を覗いて見た。



read more▼


この記事へコメントする















kinkun

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

01 | 2024/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -