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能には、段物と呼ばれている

部分があります。〔→6月18日も同じ書き出しでした。〕
段物(だんもの)とは、特定の曲の中で、まとまった謡いどころや舞いどころ、囃しどころのことです。
この部分を「○○ノ段」と呼び、独吟、仕舞、一調を演奏する部分になっています。
1曲の中でも見所となっている一段なので、構造も特殊で、内容も濃く、型も派手なものが多いです。〔ここまで6月18日と同じです。〕

第34回名古屋春栄会でも、仕舞で「玉ノ段」が出ます。

シテ「その時人人力を添え。引きあげ給えと約束し。一つの利剣を.抜きもって。
地謡「かの海底にとび入れば。空はひとつに雲の波。煙の波をしのぎつつ。
   海漫々とわけ入りて。直下とみれども底もなく。ほとりも知らぬ海底に。
   そも神変はいさ知らず。とり得ん事は不定なり。かくて龍宮にいたりて。
   宮中をみればその高さ。三十丈の玉塔に。かの玉をこめおき.香華を供え守護神に。
   八龍なみいたり.その外悪魚鰐の口。のがれがたしやわが命。
   さすが恩愛の.ふる里の方ぞ恋しき。あの波のあなたにぞ。
   我が子はあるらん.父大臣もおわすらん。さるにてもこのままに。
   別れはてなん悲しさよと。涙ぐみて立ちしが。又思い切りて.手を合わせ。
   なむや志渡寺の観音薩埵の.力を合わせてたび給えとて。
   大悲の利剣を額にあて.龍宮の中にとび入れば。
   左右へばっとぞのいたりける.そのひまに宝珠を盗みとって。逃げんとすれば。
   守護神追かく.かねてたくみし事なれば。持ちたる剣をとり直し。
   乳の下をかききり玉をおしこめ.剣を捨ててぞふしたりける.
   龍宮のならいに死人をいめば。辺りに近づく悪龍なし.約束の縄を動かせば。
   人々喜び引きあげたりけり。玉は知らずあまびとは海上にうかみ.いでたり。



玉ノ段」は能『海人』の一部ですが、一般的に番組には「玉ノ段」としか書かれません。
しかし、この表記では能に詳しくない多くの観客は「玉ノ段」が『海人』の一部だと気づかないのではないかと、私はかねてから思っていました。
そこで、よりわかりやすく「海人 玉ノ段」という表記の方が親切なのでは思いましたが、番組の表記にも伝統があるので難しいのだろうと勝手に考えていました。
ところが、最近、金春流以外の能の会の番組で「海士 玉ノ段」という表記を発見しました。
世の中には同じ事を考える人がいるのだと少し嬉しくなりました(よく考えると、私が思いつくようなことは、諸先輩方がとっくに思いつかれているはずだと気づきましたが…)。




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kinkun

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

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