2011/08/31 22:47:58
レンブラントを見に行きました。
先週の木曜日の午後、名古屋市美術館で開催中の特別展「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」〔2011年6月25日(土)~9月4日(日)〕を見に行きました(2011年8月25日の日記参照)。
この展覧会の副題は、“版画と絵画 天才が極めた明暗表現”。
※名古屋市美術館のサイトの特別展「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」のページ:http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/
※展覧会の公式サイト:http://www.ctv.co.jp/event/rembrandt/

[2011年8月25日(木)撮影]
この展覧会は、17世紀のオランダを代表するの画家であるレンブラント・ファン・レインが極めた明暗表現のすばらしさを伝えるべく企画されたものとのことです。
西洋絵画史上、屈指の巨匠と言われるレンブラントの第一の魅力は、光と闇の圧倒的な表現力と言われています。
レンブラントは生涯を通じて、白と黒の芸術である銅版画に取り組み、明暗表現の可能性を追求したそうです。
展覧会には93点の版画が展示され、中には、当時まだオランダに輸入されたばかりの貴重な和紙に刷られた作品が含まれているとのことです。
また、レンブラントが得意とする肖像画を中心に、11点の油彩画も展示されていました。
展覧会は、6章で構成されていました。
1 Ⅰ「黒い版画」:レンブラントと黒の階調
版画の収集家の間で、夜景や暗い室内を描いたレンブラントや17世紀のオランダ版画は“黒い版画”と呼ばれ、人気があったそうです。
ここでは、「羊飼いへのお告げ」や「三本の木」などレンブラントの“黒い版画”を代表する作品が展示されていました。
※「羊飼いへのお告げ」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/04.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
※「三本の木」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/02.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
また、「蝋燭の明かりのもとで机に向かう書生」と「ヤン・シックス」では、モノクロ版画でここまで光を描くことが可能なのかと驚かされました
※「ヤン・シックス」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/img/img_rembrandt201103_5.jpg(国立西洋美術館のサイトから)
また、意外と小さかったものの、やはり存在感のある2点の自画像「帽子をかぶる自画像」と「羽根付き帽子をかぶる自画像」も印象に残りました。
2 レンブラントの油彩(1624-1635)-光の探求
巧みな光の表現が色彩のある絵画でどう表現されているのかがよくわかる作品が展示されていました。
ここでは、巨大なイーゼルが作り出す影が目を引く「アトリエの画家」と、レンブラントが18~19歳頃の作品とされ、光源を画面外に置いた構図が秀逸な「3人の音楽家(聴覚)」が印象的でした。
※「アトリエの画家」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/05.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
また、ポスターやパンフレットにも使われている「書斎のミネルヴァ」もここに展示されていました。
光と影のコントラストが見事な立体感を生み出しており、正面からみると見つめられているような感じがしました。
※「書斎のミネルヴァ」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/img/img_rembrandt201103_2.jpg(国立西洋美術館のサイトから)
3 Ⅱ「淡い色の紙」:レンブラントと和紙刷り版画
レンブラントの版画の重要な革新性の一つが、インド紙や中国紙などの淡い色の紙に刷ったことだと言われています。
現在、レンブラントが版画に使った最も重要な用紙は、オランダの東インド会社によって日本からもたらされた紙、つまり和紙であると考えられているそうです。
「書斎の学者(ファウスト)」や「病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)」など何点かの作品は、和紙版と西洋紙版が並べて展示されており、いずれも和紙版の方が、光のコントラストが明確なことがよくわかりました。
中でも「病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)」は圧巻です。
キリストの周りのみ緻密に表現し、左側の白っぽい画面と右側の暗い画面を対照的に描いたこの作品は、モノクロ版画の限界を超えた驚異的な完成度だと感じました。
※「病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)」(レンブラント・ファン・レイン)〔和紙版〕:http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/01.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
4 レンブラントの油彩(1634-1659)-闇の誘惑
レンブラントの色彩のある絵画での闇の表現手法がよくわかる作品が展示されていました。
ここでは、顔と胸元が最も明るく描かれ、周辺が闇に沈んでいっている「ヘンドリッキェ・ストッフェルス」や、窓からの自然光を描き、窓の外の明るさと室内の薄暗さのコントラストを強調する構図の「トビトとハンナ」が印象的でした。
※「ヘンドリッキェ・ストッフェルス」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/06.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
5 Ⅲ「とても変わった技法」:レンブラントとキアロスクーロ
レンブラントのキアロスクーロ〔明暗法〕への関心は、さまざまに変化しつつ、初期から晩年まで一貫して持続したとのことです。
ここでは、そうしたレンブラントの多様な明暗表現を初期から晩年まで辿る展示でした。
まるで未完成のように白い画面の下部と背景を緻密に描き込んだ画面上部の対比が鮮やかな「モデルを描く芸術家」や、白と黒の生み出す光と闇のコントラストが巧みな「ラザロの復活」が印象に残りました。
また、ポスターにも使われているレンブラントのエッチング作品の最高傑作と言われる「石の手摺りにもたれる自画像」や、インクの濃淡で光を表現した銅板版画の傑作「神殿奉納」もここに展示されていました。
※「石の手摺りにもたれる自画像」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/03.jpg(名古屋市美術館のサイトから)

[2011年8月25日(木)撮影]
6 Ⅳ『三本の十字架』と『エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト』-2点の傑作版画
レンブラントの代表作である「三本の十字架」と「エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)」のステート〔版〕と用紙が異なった複数の作品が展示されており、非常に面白かったです。
生前、その名声は油彩画よりもむしろ版画に負うところが大きかったと言われるレンブラントの版画作品の全貌がわかる魅力的な展覧会でした。
また、用紙による違いがわかるように、照明にも配慮しているとのことで、和紙に刷った版画の魅力がよくわかりました。
私が訪れたのは平日の午後だったこともあり、館内はそれほど混雑しておらず、ゆっくりと見ることができました。
特に版画は小さな作品が多いので、作品に近づいてみることでき、うれしかったです。
先週の木曜日の午後、名古屋市美術館で開催中の特別展「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」〔2011年6月25日(土)~9月4日(日)〕を見に行きました(2011年8月25日の日記参照)。
この展覧会の副題は、“版画と絵画 天才が極めた明暗表現”。
※名古屋市美術館のサイトの特別展「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」のページ:http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/
※展覧会の公式サイト:http://www.ctv.co.jp/event/rembrandt/

[2011年8月25日(木)撮影]
この展覧会は、17世紀のオランダを代表するの画家であるレンブラント・ファン・レインが極めた明暗表現のすばらしさを伝えるべく企画されたものとのことです。
西洋絵画史上、屈指の巨匠と言われるレンブラントの第一の魅力は、光と闇の圧倒的な表現力と言われています。
レンブラントは生涯を通じて、白と黒の芸術である銅版画に取り組み、明暗表現の可能性を追求したそうです。
展覧会には93点の版画が展示され、中には、当時まだオランダに輸入されたばかりの貴重な和紙に刷られた作品が含まれているとのことです。
また、レンブラントが得意とする肖像画を中心に、11点の油彩画も展示されていました。
展覧会は、6章で構成されていました。
1 Ⅰ「黒い版画」:レンブラントと黒の階調
版画の収集家の間で、夜景や暗い室内を描いたレンブラントや17世紀のオランダ版画は“黒い版画”と呼ばれ、人気があったそうです。
ここでは、「羊飼いへのお告げ」や「三本の木」などレンブラントの“黒い版画”を代表する作品が展示されていました。
※「羊飼いへのお告げ」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/04.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
※「三本の木」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/02.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
また、「蝋燭の明かりのもとで机に向かう書生」と「ヤン・シックス」では、モノクロ版画でここまで光を描くことが可能なのかと驚かされました
※「ヤン・シックス」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/img/img_rembrandt201103_5.jpg(国立西洋美術館のサイトから)
また、意外と小さかったものの、やはり存在感のある2点の自画像「帽子をかぶる自画像」と「羽根付き帽子をかぶる自画像」も印象に残りました。
2 レンブラントの油彩(1624-1635)-光の探求
巧みな光の表現が色彩のある絵画でどう表現されているのかがよくわかる作品が展示されていました。
ここでは、巨大なイーゼルが作り出す影が目を引く「アトリエの画家」と、レンブラントが18~19歳頃の作品とされ、光源を画面外に置いた構図が秀逸な「3人の音楽家(聴覚)」が印象的でした。
※「アトリエの画家」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/05.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
また、ポスターやパンフレットにも使われている「書斎のミネルヴァ」もここに展示されていました。
光と影のコントラストが見事な立体感を生み出しており、正面からみると見つめられているような感じがしました。
※「書斎のミネルヴァ」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/img/img_rembrandt201103_2.jpg(国立西洋美術館のサイトから)
3 Ⅱ「淡い色の紙」:レンブラントと和紙刷り版画
レンブラントの版画の重要な革新性の一つが、インド紙や中国紙などの淡い色の紙に刷ったことだと言われています。
現在、レンブラントが版画に使った最も重要な用紙は、オランダの東インド会社によって日本からもたらされた紙、つまり和紙であると考えられているそうです。
「書斎の学者(ファウスト)」や「病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)」など何点かの作品は、和紙版と西洋紙版が並べて展示されており、いずれも和紙版の方が、光のコントラストが明確なことがよくわかりました。
中でも「病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)」は圧巻です。
キリストの周りのみ緻密に表現し、左側の白っぽい画面と右側の暗い画面を対照的に描いたこの作品は、モノクロ版画の限界を超えた驚異的な完成度だと感じました。
※「病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)」(レンブラント・ファン・レイン)〔和紙版〕:http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/01.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
4 レンブラントの油彩(1634-1659)-闇の誘惑
レンブラントの色彩のある絵画での闇の表現手法がよくわかる作品が展示されていました。
ここでは、顔と胸元が最も明るく描かれ、周辺が闇に沈んでいっている「ヘンドリッキェ・ストッフェルス」や、窓からの自然光を描き、窓の外の明るさと室内の薄暗さのコントラストを強調する構図の「トビトとハンナ」が印象的でした。
※「ヘンドリッキェ・ストッフェルス」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/06.jpg(名古屋市美術館のサイトから)
5 Ⅲ「とても変わった技法」:レンブラントとキアロスクーロ
レンブラントのキアロスクーロ〔明暗法〕への関心は、さまざまに変化しつつ、初期から晩年まで一貫して持続したとのことです。
ここでは、そうしたレンブラントの多様な明暗表現を初期から晩年まで辿る展示でした。
まるで未完成のように白い画面の下部と背景を緻密に描き込んだ画面上部の対比が鮮やかな「モデルを描く芸術家」や、白と黒の生み出す光と闇のコントラストが巧みな「ラザロの復活」が印象に残りました。
また、ポスターにも使われているレンブラントのエッチング作品の最高傑作と言われる「石の手摺りにもたれる自画像」や、インクの濃淡で光を表現した銅板版画の傑作「神殿奉納」もここに展示されていました。
※「石の手摺りにもたれる自画像」(レンブラント・ファン・レイン):http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/rembrandt/img/03.jpg(名古屋市美術館のサイトから)

[2011年8月25日(木)撮影]
6 Ⅳ『三本の十字架』と『エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト』-2点の傑作版画
レンブラントの代表作である「三本の十字架」と「エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)」のステート〔版〕と用紙が異なった複数の作品が展示されており、非常に面白かったです。
生前、その名声は油彩画よりもむしろ版画に負うところが大きかったと言われるレンブラントの版画作品の全貌がわかる魅力的な展覧会でした。
また、用紙による違いがわかるように、照明にも配慮しているとのことで、和紙に刷った版画の魅力がよくわかりました。
私が訪れたのは平日の午後だったこともあり、館内はそれほど混雑しておらず、ゆっくりと見ることができました。
特に版画は小さな作品が多いので、作品に近づいてみることでき、うれしかったです。