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今日は吉行エイスケの命日です。

吉行エイスケ(本名:栄助)〔明治39(1906)年5月10日~昭和15(1940)年7月8日)は、ダダイスト詩人小説家です。
岡山県御津郡の出身で、大正12(1923)年、17歳のときに松本安久利と入籍します。
翌大正13(1924)年に長男の淳之介が、昭和10(1935)年に長女の和子が、昭和14(1939)年に次女の理恵子が生まれます。
昭和15(1940)年7月8日に狭心症により、34歳の若さで急死しました。

戦後は、ほとんど忘れられた存在でしたが、平成9(1997)年度上半期に放送された、第56作目のNHK連続テレビ小説あぐり』で安久利夫人がヒロイン(あぐり役は田中美里さん)となり、その夫・エイスケを演じた野村萬斎さんが人気を集めたので、一躍有名になりました。

今日は、吉行エイスケの作品から、ダダイズムを象徴するような短編『飛行機から墜ちるまで』を紹介します。
昭和5(1930)年6月に発表されたこの作品は、詩とも小説ともつかない物語がリズムのよいテンポで繰り広げられており、物語の筋よりも、ちりばめられた言葉の響きを楽しませることに、主眼を置いているようです。

飛行機から墜ちるまで』(吉行エイスケ

 新婚者と、女角力になったタルタン、彼女のために殺されてしまった花聟、歓楽の夜の海を水自転車で彼にあたえた、妖婦タルタンの愚かな行動、水底深く死んだ花聟のダンデズム、影は水に映る。
 水自転車、香港、そこで彼女は仲居をしていた。
 日本へ帰ると踊りの名手、華麗な売笑婦、タルタン。

 ここは門司市、東川端の卑猥な街、カアルトン・バアの青い給仕人の花風病の体温、ロシア女の新らしい技術の中で無頼漢の唄う流行歌。
 落つきを失った新聞記者のYの見たマダム・ハヤミの地平線、吊ランプ下げた海峡の船が下関に着くと、僕はサンヨウ・ホテルの踊場にマダム・ハヤミを迎える。露台でハヤミは僕を賞讃して、愛を誓った
 のだが、翌日、ホテルの僕の部屋、ノックするとYが飛込んできた。
 ハヤミのオオケストラ、彼の人糞。
 ――君! マダム・ハヤミの奴、大理石の経帷子きこんで昨夜晩く神戸へ行ったぞ、おい、君。女の肉体讃美はよさないか。
 ――おい。×酒よこせ。僕のタンゴ踊、本場仕込みなのでハヤミは腹痛を起したのだ。Y、僕は粋な香港に未練があるんだ。
 空しく、僕は欧洲行の船を棄てて、マダム・ハヤミを追って神戸行急行列車に乗り込んだ。
 ――おい、君。マダム・ハヤミ、俺も恋していた。彼女の×××送ってよこせ。
 ――NACH KOBES ×××万歳!
 下関駅を列車は離れた。Yが汚れたハンカチを振っている。
 数時間後、僕は岡山で下車すると、巡業中の歌劇団のポスターを横眼で見ながら、車を硝子張りの、「金髪バー」の前でとめて、酒杯の中に沈んで行った。すると、肥満した女主人が僕に惚れて煩悶しだした。
 頭のよくない調合人は、混合酒の控帳めくっている。××開始、ウェートレスの英国の少女、メリーをからかってしたたか膝を折られ泣面をしている男。だが、メリーは僕を見ると恋愛相談所めがけて夢中に走り出した。
 ――いらっしゃい。妾の主人は、非度いラヴ・レタの蛇なのです。恋愛過度、チタでレオ・トルストイに小説を書く方法を三万ルーブルも仕払って教ったのですが、いまの世の中で何んの役に立つものですか………。
 壁にはルノアールの偽もの蜿蜒の画がかかっていた。
 しかし僕は内緒で、片隅の赤髪の女に色眼をつかった。彼女は巨大で腿のあたりは猶太女の輪廓をもって、皮膚は荒れて赤らんで堅固な体躯をしていた。
 ――君の名は? と、僕が色欲のダリアに向って聞いた。
 ――妾、貴男の情婦、夜のボップよ。
 すると忽ち女は死物狂い、僕に倒れかかった。
 僕とボップ、裏街の夜、アアク燈、柳暗花明の巷を駈け抜けると、古寺院の境内、数時間、僕はだまって経過した。
 ――ロップ、一時は駄じゃれで君をメキシコ湾だと云ったが、僕の純情知ってくれたか。
 辻自動車が疾走する、満月、天主閣、車が湖畔を疾走するとき、再びロップは僕に傾倒した。
 A・A橋の下で、ボートに乗って夜の河岸を離れて、ロップは、カルメンの五章を唄いながら櫂を水に落した。

いくら、お前が云い寄っても、駄目よ。
トララ トララ トララ トララ

 緑色のイルミネェション、青い眼鏡に穴をあけながら、水の上を進んで行く。
 奔流、ごろつきのような波の音が僕に英国少女メリーの靴の踵と、乳房に鬘をかむったような女主人を思い出させた。
 そのときロップが僕に云った。
 ――ねえ、二人でクラブへ行きましょう。スペイン式の女学生がいるわ、シャンパン飲まして欲しいの………。
 ――ロップ、紙幣と品行方正の匂いがする。
 ――よう!
 ――醜婦奴、ガウンが百度ひらいたって、糞。
 ――………………
 ――………………
     ――――――――――――――――――――――――
 クラブの化粧室に這入ると、ロップは××になって仰向けのまま寝てしまった。僕は浴場で屡々、結婚の感触を衝けた。そのたびに手術室に逃げこんでいさぎよく離婚してしまった。
 僕が客間へ出ると、人々は足角力の競技に耽っていた。踊場では跛の老夫婦が人形を抱いて踊っていた。食堂では角帽の中学生が恋人の女学生の話しをしている。また僕は、卓子の一隅で蛙を食べている知合の旅女優、彼女は僕を見そめると、やってきて僕に囁いた。
 ――本当よ! 妾のテノアは東京へ逃げてしまったんです。彼は皮膚病だったんです。妾も、歌劇団を抜け出すつもりなんです。マネエジャ達は妾の唇について居心地がよくないと云うんです。妾は好色家の妻にだってなるんです。連れて逃げてください。
 あまりに、熱心に僕が彼女と恋の投機に夢中なので中学生たちが冷かすのだった。
 無線電信――六〇六――石碑――W.C
 ――じゃ、間違いっこなし、明朝、練兵場よ。(哲学よ、信頼してもよくって?)
 僕は帽子をとりに化粧室に引返す。すると僕はそこにロップの粗悪な寝顔を見て、廻れ右をすると、彼女の腹部に片足で立上って、そのまま躊躇なく外へ飛び出した。

 午前八時岡山練兵場出発――F飛行士は、彼は昔、自転車周回競争の選手だった。上海に挙行された東邦大会の選手権把持者――だが、女優のNは艶めかしい嘔吐を空中に吐いた。
 ――妾、恐ろしい!
 F飛行士は、女客のため屡々、墜落しようとする。彼の強気な毛むじゃらの足は、縁日で買ったような両翼を修繕しては、飛行を継続する。そのたびにはらはらして女優の美貌から脂粉がはげおちた。
 海原、離宮、車輛、工場のテニスコート、僕が彼女の乳房のあたりを見つめているうちに、八時四十分、大阪着。

 僕が眼を覚ますと、陽気で騒がしい支那人の鼻歌が聞えてくる。僕たちは墜落したらしい。そのまま李鄭の部屋で前後不覚になってしまっていたのではないだろうか?
 あれも贋ものの飛行機だったろうか――李鄭の後から僕は広間へついてあらわれると、僕は忽ち、無数の支那服の女に交ってチイク・ダンスを踊るタルタンの素足の踊姿を認めたんです。



ダダイスムは、第一次大戦中に国際的に展開された芸術革命運動で、理性を優位におく既成のあらゆる価値観を否定し、芸術の自由な発想と表現をめざしたもので、反合理主義・反道徳の態度が特色だそうです。



【ダダイズム】
何だか・・良く分からないまま読みました。(^^ゞ
さて、このアグリさん、美容院を経営。
公文研究会の東京本社ビルの一階で店名もアグリ。。
でも早速『美容院なのにアグリーではねえ。行く気がしないよね』と仲間のコメント。(^u^)
吉行さんご本人、天下の二枚目だった様ですね。
【Re: ダダイズム】
草笛さん、こんばんは。

いつもコメントありがとうございます。
この短編は、吉行エイスケのダダイスムの代表作だと思いますが、私にもよくわかりません。
だから、忘れられていったのでしょう。
ダダイスムの影響を受けた中原中也の詩が今も人気があるのとは対照的です。
ダダイスムは、日本語では韻文の方が相性が良かったのかもしれませんね。

美容室あぐりの閉店後、同じ場所がヘアーサロンになっているというのは本当ですか?


【あぐり】
あぐり閉店?詳しくは解りませんが・・・本部社員に訊いてみますね。
ご先輩の後葬儀とか・・・お疲れ様でした。
自分が老いてみると、若い人に伝えたいことがいっぱいある。
でも、自分で獲得していただくしかないのですよね。
体験を経験にまで昇華させて、身につけていける人は少ない。そう思っています。
言えば言うほど疎ましがられますから。(;一_一)
いま、先に逝かれた方々の言葉の真実にやっと、気付く始末です。
人類の精神的進化は全くはかどって居ない。繰り返していくしかないのでしょう。可笑しいですね。
【Re: あぐり】
草笛さん、こんばんは。

コメントありがとうございます。
返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。

お聞きしたいことがたくさんあったのに、なかなか直接お聞きできないうちに亡くなられてしまうことが多く、
いつも後悔しています。

“あぐり”の件ではお手数をおかけしますが、わかったら教えてください。
よろしくお願いします。
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辛くて苦しい治療を続けなくても、狭心症や不整脈の症状は自分の力で改善することができるのです。 ...

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

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