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ボストン美術館浮世絵名品展に行きました。

昨日(2010年11月14日)、名古屋ボストン美術館で開催中の「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代~清長、歌麿、写楽」〔2010年10月9日(土)~2011年1月30日(日)〕を見に行きました。
この展覧会は、ボストン美術館の5万点にのぼる浮世絵版画コレクションを紹介する「浮世絵名品展」の第2弾です。
今回の展覧会「錦絵の黄金時代」は、副題に“清長、歌麿、写”とあるように、この3人の活躍した天明・寛政年間(1781~1801)の作品が中心の展覧会とのことです。
町人文化が花開いたこの時代は、個性豊かな絵師たちが、これまでにない斬新な構図と色合いの作品を次々と生み出し、まさに錦絵の黄金時代だったとのこと。
極めて珍しい清長の初期作品や歌麿の役者絵、歌麿芸術の絶頂期とされる雲母摺美人大首絵、そして21点の写楽役者絵など選りすぐりの名品約140点を一堂に見ることができる贅沢な展覧会でした。
名古屋ボストン美術館のサイトの「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代」のページ:http://www.nagoya-boston.or.jp/exhibition/list/nishikie-201010/outline.html
※「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代」の公式サイト:http://ukiyoe.exhn.jp/

名古屋ボストン美術館201011_01
[2010年11月14日(日)撮影]

展覧会は、4章で構成されていました。今日と明日の2回に分けて紹介します。

第一章 鳥居清長

鳥居清長〔1752~1815〕は、鳥居清満〔1735~1785〕の門人として明和年間役者似顔絵でデビューしますが、後に美人画で一世を風靡します。

今回展示されていた美人画では、品川の遊女を月次で描いたシリーズの一つで、墨摺の背景に月と漁火が浮かび上がる『南見十二候 九月』が圧巻です。
特に、墨摺りの背景の闇の中の松の葉、漁火、対岸と遠ざかる遠近法は秀逸でした。
※『南見十二候 九月』:http://ukiyoe.exhn.jp/highlight/images/part1_img02.jpg(展覧会の公式サイトから)

また、「風俗東之錦」は、「当世遊里美人合」、「美南見十二候」とともに大判錦絵三大揃物と呼ばれ、江戸の都会風俗を描いた清長美人画の傑作です。
全20図のうち、2枚続のものは2点あり、今回は、そのうちの一つ『風俗東之錦 萩見』が展示されていました。
2枚続きにすることにより、横長のワイドな画面を生かした構図が可能になり、屋外の行楽が生き生きと描かれていました。
※『風俗東之錦 萩見』:http://ukiyoe.exhn.jp/highlight/images/part1_img04.jpg(展覧会の公式サイトから)

役者絵では、清長が考案した役者の背後に山台に乗った浄瑠璃の太夫出語り囃子方出囃子を描く出語り図出囃子図)が、『三代目瀬川菊之丞の小糸 山下万菊の賤機姫 三代目沢村宗十郎の大友陸奥介』 始め数点展示されていました。
浄瑠璃の太夫囃子方を描くことで実際の舞台のような雰囲気が良く出ています。
また、実際の舞台では同時に登場しない3人を同時に描いた『五代目市川団十郎の横川学範、三代目沢村宗十郎の源九郎狐、瀬川富三郎の静御前』や、飛んでいる蝶も含め画面に動きが感じられる『三代瀬川菊之丞の石橋』など、さまざまな趣向のものがありました。

また、ボストン美術館のコレクションの保存状態の良さは有名ですが、遊女がモデルの着物見本帳とも言える『雛形若葉の初模様 丁子屋内 丁山 しをり つまき』の色の鮮やかさには本当に驚かされました。
※『雛形若葉の初模様 丁子屋内 丁山 しをり つまき』:http://ukiyoe.exhn.jp/highlight/images/part1_img01.jpg(展覧会の公式サイトから)

第二章 喜多川歌麿

天明5(1785)年に鳥居家三代目の清満が亡くなると、清長が四代目を継ぐことになり、清長鳥居家の家業である看板絵芝居関係の作品に専念することになります。
その結果、清長美人画の世界から、その絶頂期に事実上引退していまいます。
喜多川歌麿は、このタイミングで世に出、それまで役者似顔絵のものであった大首絵を用い、雲母摺の背景に妖艶な美人を描いて、一躍、美人画の第一人者となりました。

今回の展示で、私が一番印象に残ったのは『難波屋おきた』と『江戸町壹丁目 玉屋内 若梅 むめの いろか』の白雲母刷のキラキラした背景です。
※『江戸町壹丁目 玉屋内 若梅 むめの いろか』:http://www.nagoya-boston.or.jp/upload/im_nishikie-201010_12.jpg名古屋ボストン美術館のサイトから)

同じ難波屋のおきたを描いた『高名美人六家撰 難波屋おきた』では、寛政5(1793)年に遊女以外の名前を絵に描くことが禁じられたため、“菜っ葉が二把と矢(なにわや”と“沖と田んぼ(おきた”という判じ絵で名前が表されていたのが興味深かったです。
また、『青楼仁和嘉女芸者 茶せん売 黒木売 さいもん』と『吉原仁和嘉 荻江松蔵 峯 いと』では、同じ禁制により名前が着物や扇の柄で表されていました。
※『青楼仁和嘉女芸者 茶せん売 黒木売 さいもん』:http://ukiyoe.exhn.jp/highlight/images/part2_img02.jpg(展覧会の公式サイトから)

髪の毛の生え際の緻密な描写が印象的な『歌撰恋之部 稀ニ逢恋』や手前の女性(おそらく雛鶴か)の団扇が透けて艶然と笑う口元が見えるという構図が斬新な『青楼遊君合鏡 丁子屋 雛鶴 雛松』など、高い芸術性が感じられる歌麿絶頂期の美人画も何点か展示されていました。
※『歌撰恋之部 稀ニ逢恋』:http://ukiyoe.exhn.jp/highlight/images/part2_img03.jpg(展覧会の公式サイトから)
※『青楼遊君合鏡 丁子屋 雛鶴 雛松』:http://ukiyoe.exhn.jp/highlight/images/part2_img04.jpg(展覧会の公式サイトから)

また、写楽の『松本米三郎のけはい坂の少将、実はしのぶ』と共にこの展覧会のポスターやパンフレットに使われている美人大首絵の傑作『当世踊子揃 鷺娘』の前は一段と混雑していました。
※『当世踊子揃 鷺娘』:http://www.nagoya-boston.or.jp/upload/im_nishikie-201010_06.jpg名古屋ボストン美術館のサイトから)

部屋の外で一人で酔いを醒ます女性と賑やかな宴会の様子の対比を描いた『千代鶴』では、障子のシルエットを使った構図が秀逸です。
また、夏の宵を描いた『大川端夕涼』は、川面を渡る涼しい風が感じられるようでした。

この他、3枚組のうちの2枚でが描かれた『琴棋書画』(残りの1点にが描かれていることが予想されます)や『唐美人宴遊の図』のように中国文人趣味が色濃い作品もありました。

美人画以外では、忠臣蔵を題材としたものでは珍しい半身像の『忠臣蔵 七段目』と、ユーモラスに座敷遊びに興じる七福神を描いた『七福神座敷遊び』(3枚続きのうちの2枚、毘沙門天布袋は残りの1枚に描かれているようです)が目を引きました。
また、五節句の場面をパノラマのように描いた『五節句』では、重箱屏風文机が2つの画面を繋いで描かれているのが興味深かったです。

展示されていた中では最晩年の作品である豊臣秀吉石田三成と思われる人物が描かれている『真柴久吉』は、秀吉の後ろの武士が侍女に舌を出しており、この場面が武士を茶化しているとして、文化1年(1804年)に歌麿が罰せられるきっかけの一つになったと言われているそうです。


名古屋ボストン美術館のある金山南ビルのロビーには、美人画のバナーが設置してありました。

名古屋ボストン美術館201011_02
名古屋ボストン美術館201011_03
[2010年11月14日(日)撮影]


<続きは明日、紹介させていただきます。>


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kinkun

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

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