2010/10/25 21:41:57
徳川美術館に行きました。
徳川美術館と蓬左文庫では、名古屋開府400年 徳川美術館・蓬左文庫開館75周年記念 秋季特別展「尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて-」〔2010年10月2日(土)[蓬左文庫の展示室は、9月29日(水)]~11月7日(日)〕が開催中でした。
この展覧会は、今年が徳川美術館と蓬左文庫が開館して75周年となり、徳川家康の命で名古屋が開府して400年にもあたるのを記念して、徳川美術館所蔵の名品優品を一挙に公開するものだそうです。
※徳川美術館のサイトの「尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて-」のページ:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/index.html
※蓬左文庫のサイトの「尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて-」のページ:http://housa.city.nagoya.jp/exhibition/index.html

[2010年10月24日(日)撮影]
徳川美術館は、江戸時代には御三家筆頭であった尾張徳川家に伝えられた、いわゆる大名道具を展示公開している美術館で昭和10(1935)年に開館しています。
収蔵品は「駿府御分物」・「駿府御譲本」と呼ばれる徳川家康の遺品を中核として、歴代藩主や夫人たちの蒐集品、婚礼の際の持参品などで、その数一万数千件にも及んでいるそうです。
これらの中には、室町将軍家を始め、織田信長・豊臣秀吉ゆかりの品々も多く含まれているとのことです。
さらに、徳川将軍家(宗家)をはじめ他の大大名家から売立てられた重宝類の一部も購入し、名古屋の豪商であった岡谷家をはじめいくつかの篤志家の寄贈品を加え、充実した内容の収蔵品を誇っているとのことです。
一方、蓬左文庫は尾張徳川家の旧蔵書を中心に優れた和漢の古典籍を所蔵する公開文庫で、同じく昭和10(1935)年に、東京の徳川家邸内に開館しています。
昭和25(1950)年からは、現在の土地に移り、名古屋市によって運営されています。
徳川家康の遺品として譲られた「駿河御譲本」3000冊を中核として、初代藩主義直が名古屋城二の丸御殿内に創設した“御文庫”の蔵書を受け継いでいるとのことです。
今回の展覧会では、両館の開館75周年と名古屋開府400年を記念して、両館が収蔵する尾張徳川家の名宝に加え、贈与されたり売却された尾張徳川家の旧蔵品も里帰りし、国宝9件、重要文化財46件を含む名品優品を、すべての展示室を用いて、これまでにない規模で一挙に公開するものだそうです。
非常の膨大な展示でしたので、徳川美術館新館、蓬左文庫展示室、徳川美術館本館(旧館)の3回に分けて紹介します。
徳川美術館の新館(第一~第五展示室)は「伝来の名品」と題した展示でした。
第一展示室では、『短刀 無銘 正宗 名物 庖丁正宗』をはじめとする国宝の刀剣七振や徳川家康・義直親子の武器武具類が展示されていました。
※『短刀 無銘 正宗 名物 庖丁正宗』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
教科書でも有名な『徳川家康三方ケ原戦役画像』や織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人の天下人が同一画面に描かれていることでも有名な『長篠合戦図屏風』も展示されていました。
※『徳川家康三方ケ原戦役画像』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h20/03/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『長篠合戦図屏風』(中央部):http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h19/03/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
また、桐紋のため、かつては秀吉着用とされていたものの、最近になって家康着用であることがわかった『花色日の丸威具足』や400年以上の時を経ているにもかかわらずその輝きが美しい家康所用で没後に義直に譲られた重要文化財『脇指 無銘 貞宗 名物 物吉貞宗』も見応えがありました。
※『花色日の丸威具足』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room1/image/02.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『脇指 無銘 貞宗 名物 物吉貞宗』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h19/01/image/08.jpg(徳川美術館のサイトから)
首の部分にチューリップの意匠がある『唐子文染付徳利』や聖母マリアと思われる人面が描かれている『火縄銃 六匁筒 マリア像・唐草文象嵌』などヨーロッパの文化の影響を見ることができる品もあり、興味深かったです。
その他、非常に小さいものの細密な細工の後藤徳乗作の『猩々舞図三所物』や火蓋に金で葵の紋が意匠されている『火縄銃 六匁筒 人面図(アポロ)・唐草文象嵌』も印象に残りました。
第二展示室と第三展示室では、元和9(1623)年2月に、二代将軍徳川秀忠が江戸の尾張屋敷を
公式に訪問した際の記録「元和御成記」に基づき、「御数寄屋置合」、「御成書院置合」、「御鎖の間」などの飾付けのようすが現存する名物茶器によって再現されていました。
名古屋城二之丸御殿にあった猿面茶室が復元されている第二展示室では、大名物で白天目三椀の一つで重要文化財の『白天目』や表面に銀色の細かい油滴の並ぶ『曜変天目(油滴天目)』など美しさに目を奪われました。
※『白天目』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/image/02.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『曜変天目(油滴天目)』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room2/image/04.jpg(徳川美術館のサイトから)
また、『黄天目』の不思議な透明感も印象に残りました。
また、千利休が自ら削って、最期の茶会に用い、古田織部に与えたとされる『竹茶杓 銘 泪 千利休作』や淡い墨の強弱で雄大な景色を描いた『洞庭秋月図 伝牧谿筆』も展示されており、その前は多くの人で大混雑でした。
※『竹茶杓 銘 泪 千利休作』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room2/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『洞庭秋月図 伝牧谿筆』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room2/image/09.jpg(徳川美術館のサイトから)
また、第三展示室には、名古屋城二之丸御殿の広間と鎖の間の一部が復元されています。
ここでは、蓋にも千鳥をかたどったつまみが付いており、盗賊の石川五右衛門が秀吉の寝所に忍び込んだとき、この千鳥が鳴いたため捕らえられたという伝説がある『青磁香炉 銘 千鳥』や後醍醐天皇が笠置・吉野に遷幸した折にも懐中していられたと伝えられている『盆石 銘 夢の浮橋』など伝説の名品が展示されていました。
※『青磁香炉 銘 千鳥』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room3/image/04.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『盆石 銘 夢の浮橋』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room3/image/05.jpg(徳川美術館のサイトから)
名古屋城二之丸御殿の能舞台が原寸大で復元されている第四展示室では華麗な大名能の様子が偲ばれる能面や豪華な能装束などが展示されていました。
ここでは、大胆な鳳凰のデザインが目を引く『紫地鳳凰文金襴長絹』が印象に残りました。
※『紫地鳳凰文金襴長絹』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room4/image/08.jpg(徳川美術館のサイトから)
第五展示室では、大名家に嫁いだ姫君たちが持参した婚礼調度などの奥道具が展示されていました。
『純金葵紋散蜀江文硯箱』の豪華な美しさや『純銀檜垣に梅図香盆飾り』の緻密な細工が印象に残りました。
また、金銀の砂子を使ったきらびやかで細密な描写の『歌舞伎図巻』や一瞬の動きをとらえた表現力が秀逸な『本多平八郎姿絵屏風』などの近世初期の風俗画も展示されていました。
※『歌舞伎図巻』:http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=90610(文化遺産オンラインから)
※『本多平八郎姿絵屏風』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/image/05.jpg(徳川美術館のサイトから)
これまで、企画展に合わせて別々にしか展示されていなかった徳川美術館の名品が一挙公開されており、大変見応えのある展示でした。
<続きは明日以降、紹介させていただきます。>
徳川美術館と蓬左文庫では、名古屋開府400年 徳川美術館・蓬左文庫開館75周年記念 秋季特別展「尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて-」〔2010年10月2日(土)[蓬左文庫の展示室は、9月29日(水)]~11月7日(日)〕が開催中でした。
この展覧会は、今年が徳川美術館と蓬左文庫が開館して75周年となり、徳川家康の命で名古屋が開府して400年にもあたるのを記念して、徳川美術館所蔵の名品優品を一挙に公開するものだそうです。
※徳川美術館のサイトの「尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて-」のページ:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/index.html
※蓬左文庫のサイトの「尾張徳川家の名宝 -里帰りの名品を含めて-」のページ:http://housa.city.nagoya.jp/exhibition/index.html

[2010年10月24日(日)撮影]
徳川美術館は、江戸時代には御三家筆頭であった尾張徳川家に伝えられた、いわゆる大名道具を展示公開している美術館で昭和10(1935)年に開館しています。
収蔵品は「駿府御分物」・「駿府御譲本」と呼ばれる徳川家康の遺品を中核として、歴代藩主や夫人たちの蒐集品、婚礼の際の持参品などで、その数一万数千件にも及んでいるそうです。
これらの中には、室町将軍家を始め、織田信長・豊臣秀吉ゆかりの品々も多く含まれているとのことです。
さらに、徳川将軍家(宗家)をはじめ他の大大名家から売立てられた重宝類の一部も購入し、名古屋の豪商であった岡谷家をはじめいくつかの篤志家の寄贈品を加え、充実した内容の収蔵品を誇っているとのことです。
一方、蓬左文庫は尾張徳川家の旧蔵書を中心に優れた和漢の古典籍を所蔵する公開文庫で、同じく昭和10(1935)年に、東京の徳川家邸内に開館しています。
昭和25(1950)年からは、現在の土地に移り、名古屋市によって運営されています。
徳川家康の遺品として譲られた「駿河御譲本」3000冊を中核として、初代藩主義直が名古屋城二の丸御殿内に創設した“御文庫”の蔵書を受け継いでいるとのことです。
今回の展覧会では、両館の開館75周年と名古屋開府400年を記念して、両館が収蔵する尾張徳川家の名宝に加え、贈与されたり売却された尾張徳川家の旧蔵品も里帰りし、国宝9件、重要文化財46件を含む名品優品を、すべての展示室を用いて、これまでにない規模で一挙に公開するものだそうです。
非常の膨大な展示でしたので、徳川美術館新館、蓬左文庫展示室、徳川美術館本館(旧館)の3回に分けて紹介します。
徳川美術館の新館(第一~第五展示室)は「伝来の名品」と題した展示でした。
第一展示室では、『短刀 無銘 正宗 名物 庖丁正宗』をはじめとする国宝の刀剣七振や徳川家康・義直親子の武器武具類が展示されていました。
※『短刀 無銘 正宗 名物 庖丁正宗』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
教科書でも有名な『徳川家康三方ケ原戦役画像』や織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人の天下人が同一画面に描かれていることでも有名な『長篠合戦図屏風』も展示されていました。
※『徳川家康三方ケ原戦役画像』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h20/03/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『長篠合戦図屏風』(中央部):http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h19/03/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
また、桐紋のため、かつては秀吉着用とされていたものの、最近になって家康着用であることがわかった『花色日の丸威具足』や400年以上の時を経ているにもかかわらずその輝きが美しい家康所用で没後に義直に譲られた重要文化財『脇指 無銘 貞宗 名物 物吉貞宗』も見応えがありました。
※『花色日の丸威具足』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room1/image/02.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『脇指 無銘 貞宗 名物 物吉貞宗』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h19/01/image/08.jpg(徳川美術館のサイトから)
首の部分にチューリップの意匠がある『唐子文染付徳利』や聖母マリアと思われる人面が描かれている『火縄銃 六匁筒 マリア像・唐草文象嵌』などヨーロッパの文化の影響を見ることができる品もあり、興味深かったです。
その他、非常に小さいものの細密な細工の後藤徳乗作の『猩々舞図三所物』や火蓋に金で葵の紋が意匠されている『火縄銃 六匁筒 人面図(アポロ)・唐草文象嵌』も印象に残りました。
第二展示室と第三展示室では、元和9(1623)年2月に、二代将軍徳川秀忠が江戸の尾張屋敷を
公式に訪問した際の記録「元和御成記」に基づき、「御数寄屋置合」、「御成書院置合」、「御鎖の間」などの飾付けのようすが現存する名物茶器によって再現されていました。
名古屋城二之丸御殿にあった猿面茶室が復元されている第二展示室では、大名物で白天目三椀の一つで重要文化財の『白天目』や表面に銀色の細かい油滴の並ぶ『曜変天目(油滴天目)』など美しさに目を奪われました。
※『白天目』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/image/02.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『曜変天目(油滴天目)』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room2/image/04.jpg(徳川美術館のサイトから)
また、『黄天目』の不思議な透明感も印象に残りました。
また、千利休が自ら削って、最期の茶会に用い、古田織部に与えたとされる『竹茶杓 銘 泪 千利休作』や淡い墨の強弱で雄大な景色を描いた『洞庭秋月図 伝牧谿筆』も展示されており、その前は多くの人で大混雑でした。
※『竹茶杓 銘 泪 千利休作』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room2/image/01.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『洞庭秋月図 伝牧谿筆』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room2/image/09.jpg(徳川美術館のサイトから)
また、第三展示室には、名古屋城二之丸御殿の広間と鎖の間の一部が復元されています。
ここでは、蓋にも千鳥をかたどったつまみが付いており、盗賊の石川五右衛門が秀吉の寝所に忍び込んだとき、この千鳥が鳴いたため捕らえられたという伝説がある『青磁香炉 銘 千鳥』や後醍醐天皇が笠置・吉野に遷幸した折にも懐中していられたと伝えられている『盆石 銘 夢の浮橋』など伝説の名品が展示されていました。
※『青磁香炉 銘 千鳥』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room3/image/04.jpg(徳川美術館のサイトから)
※『盆石 銘 夢の浮橋』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room3/image/05.jpg(徳川美術館のサイトから)
名古屋城二之丸御殿の能舞台が原寸大で復元されている第四展示室では華麗な大名能の様子が偲ばれる能面や豪華な能装束などが展示されていました。
ここでは、大胆な鳳凰のデザインが目を引く『紫地鳳凰文金襴長絹』が印象に残りました。
※『紫地鳳凰文金襴長絹』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/artifact/room4/image/08.jpg(徳川美術館のサイトから)
第五展示室では、大名家に嫁いだ姫君たちが持参した婚礼調度などの奥道具が展示されていました。
『純金葵紋散蜀江文硯箱』の豪華な美しさや『純銀檜垣に梅図香盆飾り』の緻密な細工が印象に残りました。
また、金銀の砂子を使ったきらびやかで細密な描写の『歌舞伎図巻』や一瞬の動きをとらえた表現力が秀逸な『本多平八郎姿絵屏風』などの近世初期の風俗画も展示されていました。
※『歌舞伎図巻』:http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=90610(文化遺産オンラインから)
※『本多平八郎姿絵屏風』:http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h22/06/image/05.jpg(徳川美術館のサイトから)
これまで、企画展に合わせて別々にしか展示されていなかった徳川美術館の名品が一挙公開されており、大変見応えのある展示でした。
<続きは明日以降、紹介させていただきます。>