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世の中を神秘主義が跋扈しています。

スピリチュアリズム(心霊主義)が流行している現在のわが国は、神秘主義が満ちていると言っても良いでしょう。
神秘主義とは、この世界には人智の及ばない事物、すなわち神秘が存在するとする考え方と定義されています。

今日は、芥川龍之介神秘主義についての考え方を述べているの『侏儒の言葉』の中の「神秘主義」を紹介します。

この作品に出てくるスウエデンボルグは、スウェーデン出身の神秘主義思想家エマヌエル・スヴェーデンボリ(Emanuel Swedenborg)〔1688~1772〕のことです。
また、ベエメは、ドイツ神秘主義者ヤーコプ・ベーメ(Jakob Böhme)〔1575~1624〕のことです。
いずれも代表的な神秘主義者として知られています。

侏儒の言葉』(芥川龍之介)

神秘主義

 神秘主義は文明の為に衰退し去るものではない。寧ろ文明は神秘主義に長足の進歩を与えるものである。
 古人は我々人間の先祖はアダムであると信じていた。と云う意味は創世記を信じていたと云うことである。今人は既に中学生さえ、猿であると信じている。と云う意味はダアウインの著書を信じていると云うことである。つまり書物を信ずることは今人も古人も変りはない。その上古人は少くとも創世記に目を曝らしていた。今人は少数の専門家を除き、ダアウインの著書も読まぬ癖に、恬然とその説を信じている。猿を先祖とすることはエホバの息吹きのかかった土、――アダムを先祖とすることよりも、光彩に富んだ信念ではない。しかも今人は悉こう云う信念に安んじている。
 これは進化論ばかりではない。地球は円いと云うことさえ、ほんとうに知っているものは少数である。大多数は何時か教えられたように、円いと一図に信じているのに過ぎない。なぜ円いかと問いつめて見れば、上愚は総理大臣から下愚は腰弁に至る迄、説明の出来ないことは事実である。
 次ぎにもう一つ例を挙げれば、今人は誰も古人のように幽霊の実在を信ずるものはない。しかし幽霊を見たと云う話は未に時々伝えられる。ではなぜその話を信じないのか? 幽霊などを見る者は迷信に囚われて居るからである。ではなぜ迷信に捉われているのか? 幽霊などを見るからである。こう云う今人の論法は勿論所謂循環論法に過ぎない。




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