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2007 / 12
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今日も昨日に続き、漱石の家を突然訪ねてきたの話の続きです。

と会い、そして話したことが、漱石自身の心に揺れを引き起こします。
に対して漱石は、「死は生よりも尊とい」と考えていると告白します。
胃潰瘍に悩まされ、このおよそ2年後にはを迎えることになる漱石は、既に死期を悟り、そのの意味を探しているようです。
しかし、その漱石を選んだほうが良いとはいえませんでした。
そして、
かくして常に生よりも死を尊いと信じている私の希望と助言は、ついにこの不愉快に充ちた生というものを超越する事ができなかった。
と述懐することになるのです。

今日の印象に残った文章は、記憶について語る箇所です。
私は彼女に向って、すべてを癒す「時」の流れに従って下れと云った。彼女はもしそうしたらこの大切な記憶がしだいに剥げて行くだろうと嘆いた。
心の痛みを完全に癒すには、そのこと忘れるしかない。しかし、それは、つらい記憶だけでなく、忘れたくない記憶も失うことになるという事実。とてもせつない気持ちになりました。


硝子戸の中』(夏目漱石)





 不愉快に充ちた人生をとぼとぼ辿りつつある私は、自分のいつか一度到着しなければならない死という境地について常に考えている。そうしてその死というものを生よりは楽なものだとばかり信じている。ある時はそれを人間として達し得る最上至高の状態だと思う事もある。
「死は生よりも尊とい」
 こういう言葉が近頃では絶えず私の胸を往来するようになった。





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kinkun

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

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