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2007 / 10
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在俗の名は慶滋の保胤

最後の章は、姫君も、そしても登場しない、後日談です。
では、なぜ芥川はこの章を書いたのでしょうか。
私は、法師に、「あれは極楽も地獄も知らぬ、腑甲斐ない女の魂でござる。という一言を言わせたかったためではないかと思います。
そしてこれは、言うまでもなく両親乳母と自分の周りのものに運命を委ね続けて死んでしまった姫君に対する非難です。
ただ、私は、少し姫君に厳しすぎるのではと思います。


『六の宮の姫君』(芥川龍之介)



それから何日か後の月夜、姫君に念仏を勧めた法師は、やはり朱雀門の前の曲殿に、破れ衣の膝を抱へてゐた。
すると其処へ侍が一人、悠々と何か歌ひながら、月明りの大路を歩いて来た。
侍は法師の姿を見ると、草履の足を止めたなり、さりげないやうに声をかけた。

「この頃この朱雀門のほとりに、女の泣き声がするさうではないか?」

法師は石畳みに蹲まつた儘、たつた一言返事をした。

「お聞きなされ。」



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kinkun

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

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