2007/10/16 22:55:36
九年目の晩秋
男が、9年目にようやく帰ってきます。
東国で妻を迎えていた男ですが、姫君のことを忘れてしまっていたわけではなかったようです。
「男は鄙にゐる間も、二三度京の妻のもとへ、懇ろな消息をことづけてやつた。が、使が帰らなかつたり、幸ひ帰つて来たと思へば、姫君の屋形がわからなかつたり、一度も返事は手に入らなかつた。」
『六の宮の姫君』(芥川龍之介)
四
男が京へ帰つたのは、丁度九年目の晩秋だつた。
男と常陸の妻の族と、――彼等は京へはひる途中、日がらの悪いのを避ける為に、三四日粟津に滞在した。
それから京へはひる時も、昼の人目に立たないやうに、わざと日の暮を選ぶ事にした。
男は鄙にゐる間も、二三度京の妻のもとへ、懇ろな消息をことづけてやつた。
が、使が帰らなかつたり、幸ひ帰つて来たと思へば、姫君の屋形がわからなかつたり、一度も返事は手に入らなかつた。
それだけに京へはひつたとなると、恋しさも亦一層だつた。
男は妻の父の屋形へ無事に妻を送りこむが早いか、旅仕度も解かずに六の宮へ行つた。
男が、9年目にようやく帰ってきます。
東国で妻を迎えていた男ですが、姫君のことを忘れてしまっていたわけではなかったようです。
「男は鄙にゐる間も、二三度京の妻のもとへ、懇ろな消息をことづけてやつた。が、使が帰らなかつたり、幸ひ帰つて来たと思へば、姫君の屋形がわからなかつたり、一度も返事は手に入らなかつた。」
『六の宮の姫君』(芥川龍之介)
四
男が京へ帰つたのは、丁度九年目の晩秋だつた。
男と常陸の妻の族と、――彼等は京へはひる途中、日がらの悪いのを避ける為に、三四日粟津に滞在した。
それから京へはひる時も、昼の人目に立たないやうに、わざと日の暮を選ぶ事にした。
男は鄙にゐる間も、二三度京の妻のもとへ、懇ろな消息をことづけてやつた。
が、使が帰らなかつたり、幸ひ帰つて来たと思へば、姫君の屋形がわからなかつたり、一度も返事は手に入らなかつた。
それだけに京へはひつたとなると、恋しさも亦一層だつた。
男は妻の父の屋形へ無事に妻を送りこむが早いか、旅仕度も解かずに六の宮へ行つた。
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