くちなしの花

くちなしの花が咲いていました


実家の庭に斑入りのくちなしが白い花をつけていました。
梔子(くちなし)といえば、春の沈丁花(じんちょうげ)、秋の金木犀(きんもくせい)と並び、芳香の花として有名です。
結構遠くまで香るので、ふと街角でその香りがしても、花が見つけられないことが良くあります。

くちなしの花


くちなしの花といって思い出すのは、渡哲也さんの歌(古い!年がわかるなぁ)。
くちなしの花の 花のかおりが 旅路のはてまで ついてくる」(詩:水木かおる)

俳句では、正岡子規の
薄月夜 花くちなしの 匂いけり」が
短歌では、北原白秋の
夏の日は なつかしきかな こころよく 梔子の花 汗もちてちる」が
有名です。
やはりくちなしといえば、香りなんですね!

theme : 樹木・花木
genre : 趣味・実用

永日小品・懸物

今日の名古屋は、予報とは異なり、時折晴れ間も見える蒸し暑い日となりました。
最高気温も32℃を超えたとのことです。
夕方、スコールのような雨が降りましたが、雨が上がった後も涼しくはならず蒸し暑い夜となりそうです。

今日も昨日に続き、漱石の『永日小品』から1編を紹介します。
懸物に対する老父と息子の思いの違いは、死んでしまった者(老人にとっては亡き妻、息子にとっては亡き母)と生きている者(老人にとっての孫、息子にとっての我が子)への思いの違いを投影しているようです。


『永日小品・懸物』(夏目漱石)


大刀老人は亡妻の三回忌までにはきっと一基の石碑を立ててやろうと決心した。
けれども倅の痩腕を便に、ようやく今日を過すよりほかには、一銭の貯蓄もできかねて、また春になった。
あれの命日も三月八日だがなと、訴えるような顔をして、倅に云うと、はあ、そうでしたっけと答えたぎりである。
大刀老人は、とうとう先祖伝来の大切な一幅を売払って、金の工面をしようときめた。
倅に、どうだろうと相談すると、倅は恨めしいほど無雑作にそれがいいでしょうと賛成してくれた。

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theme : 夏目漱石
genre : 本・雑誌

永日小品・蛇

雨の季節です。今日の名古屋は、雨は降らなかったものの蒸し暑い一日でした。
明日は雨の一日になりそうです。

夏目漱石の『永日小品』の2番目に「蛇」という短編があります。
『永日小品』は明治42(1909)年の1月から3月にかけて、朝日新聞に掲載されたもので、25編の短編からなる不思議な味わいのある作品です。

雨が激しく降る日の話で、雨の日に橋の上から増水した川面を眺めたときなどにふと思い出す作品です。
この話を読んで川が見たくなっても、増水した川に近づくのは危険ですので、橋の上からぐらいにしてください。


『永日小品・蛇』(夏目漱石)


木戸を開けて表へ出ると、大きな馬の足迹の中に雨がいっぱい湛っていた。
土を踏むと泥の音が蹠裏へ飛びついて来る。
踵を上げるのが痛いくらいに思われた。
手桶を右の手に提げているので、足の抜き差に都合が悪い。
際どく踏み応える時には、腰から上で調子を取るために、手に持ったものを放り出したくなる。
やがて手桶の尻をどっさと泥の底に据えてしまった。
危く倒れるところを手桶の柄に乗し懸って向うを見ると、叔父さんは一間ばかり前にいた。
蓑を着た肩の後から、三角に張った網の底がぶら下がっている。
この時被った笠が少し動いた。
笠のなかからひどい路だと云ったように聞えた。
蓑の影はやがて雨に吹かれた。
石橋の上に立って下を見ると、黒い水が草の間から推されて来る。
不断は黒節の上を三寸とは超えない底に、長い藻が、うつらうつらと揺いて、
見ても奇麗な流れであるのに、今日は底から濁った。
下から泥を吹き上げる、上から雨が叩く、真中を渦が重なり合って通る。
しばらくこの渦を見守っていた叔父さんは、口の内で、「獲れる」と云った。



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theme : 夏目漱石
genre : 本・雑誌

グリーン車の子供 中村雅楽探偵全集2

「グリーン車の子供」を読みました。

「グリーン車の子供 中村雅楽探偵全集2」(戸板康二著、創元推理文庫、1500円、2007年4月27日発売)を遅ればせながら、読了しました。

この本の厚さは、「團十郎切腹事件 中村雅楽探偵全集1」を上回り、698ページ。今回も通勤の地下鉄で読むのに苦労しました。

話は、前作同様、引退同然となった老歌舞伎役者・中村雅楽が、懇意の新聞記者・竹野が持ち込む不思議な事件の謎を解き明かすという短編。
表題の「グリーン車の子供」は日本推理作家協会賞の短編部門の第1回受賞作で、日常の謎の元祖ともいうべき作品。
この作品の日本推理作家協会賞の選考にあたり、中村雅楽竹野が乗る列車が、新幹線ひかり号ではおかしいとの指摘が出、作者の了解を得て、新幹線こだま号に変更したとのこと。でもこの変更が、作品としてさらに重大な欠陥となるという指摘が星新一氏からあったようです。
今回の創元推理文庫版では、この経緯が良くわかる佐野洋氏の「『グリーン車の子供』をめぐって」(光文社『新推理日記』1980年9月)が転載収録されています。佐野洋氏は、当時の選考委員の一人で、こうした問題がこの作品の価値を損なうものではないと結論付けています。
私も、そのような矛盾を感じさせない、鮮やかな作品だと思います。

全体の文章は、前作を読んだときも書いたように、文章は、古めかしいところがあるものの、とても読みやすい文章です。

中村雅楽も前作に収録の作品では素人探偵の雰囲気が濃厚でしたが、今回の収録作品では、表題作も含め、探偵役が地についた感じで、名探偵の風格さえ感じさせるときもあります。

これからの3冊(第3集は明後日発売です)が、とても楽しみです。


theme : 推理小説・ミステリー
genre : 本・雑誌

憑神(つきがみ)

『憑神』を見ました。

『どろろ』以来4か月ぶりに映画を見ました。
『どろろ』を見たときにも書きましたが、別にファンというわけではないのですが、今回もまた主役は妻夫木聡でした。
私の見たいと思う映画と彼の出演する映画がなぜかシンクロしているということでしょう。

で、肝心の映画『憑神』ですが、“まあまあ”といったところだと思います。
西田敏行の貧乏神は笑えましたけど…。

ラストは原作がそうなので、どうしようもないといえばどうしようもないんですが、私には納得できません。
原作者である浅田次郎は、武士道を死の美学と思っているのではないでしょうか。私は違うと思っていますので、その差かもしれません。

ただ、主人公の別所彦四郎が死に直面して、初めて生きる意味、人生の意義を見出すというテーマには、原作を読んだときにも考えさせられましたが、映画を見て改めていろいろと考えてしまいました。

映画のエンドで原作者が出演するのは、興ざめなのでやめてほしい(最近、流行っているのかもしれまんせんが…)。


theme : 憑神
genre : 映画

金春円満井会特別公演

12月2日の金春円満井会特別公演

土曜日の稽古の折に、金春穂高先生から12月2日の金春円満井会特別公演のちらしをもらいました。

特別公演ちらし_表

特別公演ちらし_裏


この公演では、井上貴覚師が『道成寺』を披かれます。
穂高先生は、飛翔君との親子競演による『橋弁慶』を舞われます。
ぜひとも見に行きたいのですが、仕事の関係で行けるかどうか…。


theme : 能楽
genre : 学問・文化・芸術

つりしのぶ

実家の軒先に「つりしのぶ」が

吊るしてありました。
今日の名古屋は、一日、雨でした。
それも梅雨特有のしとしとと降る雨ではなく、断続的に激しく降る雨でした。
実家の軒の灯篭型の「つりしのぶ」も雨に濡れていました。

つりしのぶ


「つりしのぶ」は、シノブと山苔・竹などを用いて、井桁やいかだ、灯篭などの風流な形に仕立てたもので、一説には、江戸時代中期、庭師が契約先の家にお中元として配ったのが、はじまりとされています。
明治から昭和初期にかけて一般にも広まり、主に東京下町の家の軒先を飾っていました。
シノブは、学名:D.mariesiimooreで、日本各地に分布しています。
最近は、下に風鈴を吊るしたものもあるようで、実家のものはこのタイプでした。
一茶にも、「水かけて 夜にしたりけり 釣荵(つりしのぶ)」という句があります。

また、岡本綺堂の『綺堂むかし語り』にも夏の風物詩として登場しています。


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theme : 和風、和物、日本の伝統
genre : 趣味・実用

仕舞『黒塚』

今日は仕舞のみの稽古でした。

今日の稽古は、発表会が近いということもあり非常に混雑していました。
また、3時過ぎに来た人も結構いたので、4時過ぎからの稽古は仕舞のみとなりました。
仕舞『黒塚』を通しで稽古しました。
足もとはよろよろとのところの後ずさりするときの重心移動について、今日も再度指摘を受けました。後ずさりは、廻り飛びとともに苦手です。
あと、これはずっと指摘されていることですが、すぐうつむき気味になってしまう点も改めて注意するように言われました。
二つ以上のことを同時に意識して舞うのは本当に難しいと感じた稽古でした。

7月29日に開催予定の第34回名古屋春栄会ですが、参議院選挙の投票日が1週間ずれて同じ日になったため、何人かの会員が参加できなくなりました。
したがって、舞囃子『氷室』のシテもTさんからKさんに交代することになりました。
代役の会員は、今日から稽古を始めることになったので、時間があまりなく大変だと思います。Kさんの健闘を祈っています。


theme : 能楽
genre : 学問・文化・芸術

重要文化財 織田信長画像

「城からのぞむ 尾張の戦国時代」を

名古屋市博物館で見ました。

今日の名古屋は、やっと梅雨が来たという感じの雨の一日でした。
午後、仕事で名古屋市博物館での会議に参加しました。
会議終了後、現在開催中の企画展「城からのぞむ 尾張の戦国時代」を贅沢にも、この展覧会を企画した岡村学芸員の解説付きで観覧することができました。

ちょうど、門外不出といわれ、名古屋初お目見えとなる「織田信長画像」(重要文化財 長興寺蔵)が6月24日までの期限付きで展示されていました。
教科書などでおなじみの信長の絵ですが、初めて見た第一印象は、“意外と小さい”でした。岡村さんによるとほとんど人が同じ感想を漏らされるようです。
ただ、岡村さんの解説によると、その小さな絵の中に絵師の高い美意識と技術が詰まっているとのことで、説明を聞いて見るとよりいっそう興味が増しました。

この他にも桶狭間の戦いや小牧長久手の戦いで城の果たした役割についての展示など興味深い展示がたくさんありました。

展覧会は7月16日まで開催されていますので、ぜひお出かけください。
ただし、信長画像を見たい方は、明後日までにどうぞ(それ以後は複製の展示なるとのことでした)。


theme : 美術館・博物館 展示めぐり。
genre : 学問・文化・芸術

いちじく

イチジクの実が大きくなってきました。

今日の名古屋は梅雨とは思えない真夏のような暑さでした。気温も30℃を超え、職場でもついに午後から冷房が入りました。

このところ、ベランダで鉢植えで育てているイチジクについた実が大きくなってきました。この10日間でも大分成長しました。

イチジク070611

(10日前の様子)


イチジク070621

(今朝の様子)

無花果は秋の季語のようですが、この木は6月〜7月にかけて実る種類です。
無花果の句を二つ。
 無花果の 古江を 舟のすべり来し(高浜虚子)
 無花果の ゆたかに実る 水の上(山口誓子)


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theme : 樹木・花木
genre : 趣味・実用

ダリ展

名古屋市美術館で「ダリ展」を

見ました。
所用があり、午後3時過ぎに仕事を早退して(正確には、時間休暇を2時間取得したのですが…)、伏見(名古屋市中区)の名古屋商工会議所ビルに行きました。
思ったより、大分早く用件が終了したので、近くにある名古屋市美術館で開催中の「ダリ展」を見に行きました。
平日の午後4時近くというのに、若い人で結構混雑していました。ダリは若者に人気があるようです(←この年寄りくさい言い方!)。


ダリ展



私は、正直言ってあまりダリが好きなわけではありません。
ダリの最も得意とした手法をいわれているダブルイメージにしても、私には単なる騙し絵(Trompe-l'œil)にしか見えませんし、…。

今回の展覧会で最も印象に残った絵は、「海の皮膚を引きあげるヘラクレスがクピドをめざめさせようとするヴィーナスにもう少し待って欲しいと頼む」です。
海面を海の皮膚に見立てるという発想よりも、その技法に見とれてしまいました。
この絵を見て、少しダリが好きになりました。
なお、この絵は長崎県美術館が所蔵しています。
ご覧になりたい方は、こちらでどうぞ↓
Hercules Lifting the Skin of the Sea Asks Venus for One Moment


theme : 美術館・博物館 展示めぐり。
genre : 学問・文化・芸術

三人目の幽霊

「三人目の幽霊」を読みました。

「三人目の幽霊」(大倉崇裕著、創元推理文庫、760円、2007年6月15日発売)が文庫になったので、読了しました。
落語を全く知らないのに入社早々「季刊落語」編集部に配属された新入社員の間宮緑が、編集長の牧大路と一緒に落語界の日常の謎を解いていく連作ミステリ。
収録作品は、「三人目の幽霊」、「不機嫌なソムリエ」、「三鶯荘奇談」、「崩壊する喫茶店」、「患う時計」の5編。

落語とミステリというと、落語家円紫師匠と“私”が日常の謎を解いていく北村薫の円紫シリーズが思い浮かびますが、こちらは、落語の話と物語が密接に絡んでいます。だから、元の落語を知っていると数倍面白いと思います(落語を知らなくても十分楽しめると思いますが…)。

収録作品の中では、表題作「三人目の幽霊」が一番だと思います。2人の幽霊の正体も秀逸ですし…。
最近、論理ゲーム化してなくて、血なまぐさくない、日常の謎系のミステリを選ぶ傾向がいよいよ強くなってきました。
このシリーズは既に第2作『やさしい死神』が出版されているので、文庫になるのが楽しみです。


theme : 推理小説・ミステリー
genre : 本・雑誌

段物(だんもの)

能には、段物と呼ばれている

部分があります。
段物(だんもの)とは、特定の曲の中で、まとまった謡いどころや舞いどころ、囃しどころのことです。
この部分を「○○ノ段」と呼び、独吟、仕舞、一調を演奏する部分になっています。
1曲の中でも見所となっている一段なので、構造も特殊で、内容も濃く、型も派手なものが多いです。

具体的には
 枕ノ段(『葵上』)
 玉ノ段(『海人』)
 笠ノ段(『芦刈』)
 鮎ノ段(『国栖』)
 駒ノ段(『小督』)
 網ノ段(『桜川』)
 笹ノ段(『百万』)
 鐘ノ段(『三井寺』)
 文ノ段(『熊野』)
 揉ノ段鈴ノ段(『翁』)

などがあります。

例えば、「駒の段」は、昨日の『小督』(その2)
あら面白の折からやな。 から 夫を思いてこうる名の.想夫恋なるぞ.嬉しき。 までの箇所です。

また、「鐘の段」は、3月3日の『三井寺』(その3)
かほどの聖人なりしかども。 から 真如の月の影を。眺めおりて.明かさん。 までの箇所です。

どちらの謡いも私にとっては非常に難しいので、謡うのが大変です。


theme : 能楽
genre : 学問・文化・芸術

小督(その2)

昨日、1か月ぶりに稽古に行きました。

体調を崩していたこともあり、稽古を2度ほど休んでしまったので、昨日の稽古はおよそ1か月ぶりでした。
謡は『小督』の2回目。
高倉帝の命により源仲国が小督の君を嵯峨野に捜しに行き、小督の君の弾く琴の音を頼りに小督の君を発見するところまででした。
有名な「駒ノ段」が含まれています。

ツレ「げにや一樹の蔭にやどり。一河の流れを汲む事も。
   他生の縁ぞと聞くものを。あからさまなる事ながら。
   馴れてほどふる軒の草しのぶ便りに賎の女の。
   目にふれ馴るる世のならい。あかぬは人の
   心かな。

地謡「いざいざさらば琴の音に.立てても忍ぶこの思い。
   せめてやしばし.慰むと。せめてや暫し慰むと。
   かきなす琴のおのづから。秋風にたぐえば.
   なく虫の声も悲しみの。秋や恨むる恋やうき。
   なにをかくねるおみなめし。我も浮き世の嵯峨のみぞ。
   人に語るな.この有様も.はづかしや。

シテ「あら面白の折からやな。三五夜中の新月の色。
   二千里の外も遠からぬ。叡慮かしこき勅をうけて。
   心も勇む駒の足なみ。よるのあゆみぞ.心せよ。
   牡鹿なく.この山里と。詠めけん。

地謡「嵯峨野のかたの秋の空。さこそ心もすみわたる。
   片折戸を知るべにて。名月にむちをあげて駒をはやめ急がん。

シテ「しづが家居のかりなれど。
地謡「もしやと思いここかしこに。
   駒をかけよせかけよせてひかえひかえ聞けども。
   琴彈く人はなかりけり。月にやあこがれいで給うと。
   法輪に参れば。琴こそきこえ来にけれ。
   峯の嵐か松風かそれかあらぬか。たづぬる人の琴の音か楽は。
   なにぞと聞きたれば。夫を思いてこうる名の.想夫恋なるぞ.嬉しき。

シテ「うたがいもなき小督の局の御しらべにて候。
   やがて案内を申そうずるにて候。まづこの戸あけさせ給え。

ツレ「たそや門に人音のするは心得てきき侍え。
トモツレ「中々にとかく忍ばばあしかりなんと。まづこのす枢をおしひらく。
シテ「門さされては叶うまじと。枢をおさえ内に入り。これは宣旨の御使い。
   仲国これまで参りたり。この由申し給うべし。



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theme : 能楽
genre : 学問・文化・芸術

夢十夜・第十夜

今日は第十夜です。今日で漱石の『夢十夜』の紹介も最後となります。
この話は、漱石がロンドンで「ガダラの豚の奇跡」という絵を見て着想したのではないかという説を前漢陽大学校国際文化大学教授の尹相仁(ユンサンイン)さんが唱えています。
『夢十夜』第十夜の豚のモティーフについて : 絵画体験と創作の間

この絵は現在ロンドンのテートギャラリーにある「The Miracle of the Gaderene Swine」(Briton Rivière;1883)です。
確かにこの絵の豚の群れは不気味で、夢に出てきそうです。

なお、ガダラの豚の奇跡は新約聖書のマタイによる福音書の第8章にある話です。

(0828)それから、向こう岸、ガダラの人の地に着かれると、悪霊につかれたふたりの者が、墓場から出てきてイエスに出会った。彼らは手に負えない乱暴者で、だれもその辺の道を通ることができないほどであった。
(0829)すると突然、彼らは叫んで言った、「神の子よ、あなたはわたしどもとなんの係わりがあるのです。まだその時ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦しめるのですか」。
(0830)さて、そこからはるか離れた所に、おびただしい豚の群れが飼ってあった。
(0831)悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。
(0832)そこで、イエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。
(0833)飼う者たちは逃げて町へ行き、悪霊につかれた者たちのことなど、いっさいをしらせた。
(0834)すると、町中の者がイエスに会いに出てきた。そして、イエスに会うと、この地方から去ってくださるようにと頼んだ。


この話の庄太郎は、第八夜の床屋の鏡の中に出てくる庄太郎と同一人物なのだろうか?


『夢十夜・第十夜』(夏目漱石)


庄太郎が女に攫われてから七日目の晩にふらりと帰って来て、
急に熱が出てどっと、床に就いていると云って健さんが知らせに来た。
庄太郎は町内一の好男子で、至極善良な正直者である。
ただ一つの道楽がある。
パナマの帽子を被って、夕方になると水菓子屋の店先へ腰をかけて、往来の女の顔を眺めている。
そうしてしきりに感心している。
そのほかにはこれと云うほどの特色もない。


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theme : 夏目漱石
genre : 本・雑誌

夢十夜・第九夜

今日は第九夜です。
この話も夢の話と言われなくても特に違和感はありません。
最後の一文で、ようやく夢の話だとわかると言っても過言ではないと思います。
話はとても悲しい話です。


『夢十夜・第九夜』(夏目漱石)


世の中が何となくざわつき始めた。
今にも戦争が起りそうに見える。
焼け出された裸馬が、夜昼となく、屋敷の周囲を暴れ廻ると、
それを夜昼となく足軽共が犇きながら追かけているような心持がする。
それでいて家のうちは森として静かである。
家には若い母と三つになる子供がいる。
父はどこかへ行った。



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genre : 本・雑誌

夢十夜・第八夜

今日は、第八夜です。
この話は、現実の話と言われてもそんなに不思議なところはありません。
私には、この話全体が夢なのではなく、実際に床屋の椅子に座って髪を切ってもらいながら、うつらうつらしてしまい、夢と現実がないまぜになった様子を描いた小説のような気がします。


『夢十夜・第八夜』(夏目漱石)


床屋の敷居を跨いだら、白い着物を着てかたまっていた三四人が、一度にいらっしゃいと云った。
真中に立って見廻すと、四角な部屋である。
窓が二方に開いて、残る二方に鏡が懸っている。
鏡の数を勘定したら六つあった。
自分はその一つの前へ来て腰をおろした。
すると御尻がぶくりと云った。
よほど坐り心地が好くできた椅子である。

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genre : 本・雑誌

夢十夜・第七夜

昨日に続き、夏目漱石の『夢十夜』を紹介します。
今日は第七夜です。
これも少し教訓めいています。大きな船は人生そのものなのでしょうか?


『夢十夜・第七夜』(夏目漱石)


何でも大きな船に乗っている。
この船が毎日毎夜すこしの絶間なく黒い煙を吐いて浪を切って進んで行く。
凄じい音である。
けれどもどこへ行くんだか分らない。
ただ波の底から焼火箸のような太陽が出る。
それが高い帆柱の真上まで来てしばらく挂っているかと思うと、
いつの間にか大きな船を追い越して、先へ行ってしまう。
そうして、しまいには焼火箸のようにじゅっといってまた波の底に沈んで行く。



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夢十夜・第六夜

およそ10日ぶりに夏目漱石の『夢十夜』の紹介を再開します。
今日は第六夜です。
この話も結構有名で、教科書に載っていたこともあるようです。
この話にはきちんとした落ちがあり、教訓を読み取ることもできます。…ゆえに、その解釈はいくつも示されています。


 『夢十夜・第六夜』(夏目漱石)


運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると、
自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬評をやっていた。
山門の前五六間の所には、大きな赤松があって、
その幹が斜めに山門の甍を隠して、遠い青空まで伸びている。
松の緑と朱塗の門が互いに照り合ってみごとに見える。
その上松の位地が好い。
門の左の端を眼障にならないように、斜に切って行って、
上になるほど幅を広く屋根まで突出しているのが何となく古風である。
鎌倉時代とも思われる。
ところが見ているものは、みんな自分と同じく、明治の人間である。


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theme : 夏目漱石
genre : 本・雑誌

第34回名古屋春栄会の番組

第34回名古屋春栄会の番組が

できましたので、名古屋春栄会のウェブサイトに掲載しました。
 「第34回名古屋春栄会 番組」 
毎年恒例の夏の発表会です。
今年も舞囃子は3番です。演目は次の3つです。
 『氷室』、『花月』、『難波
(なお、『氷室』以外は、名古屋春栄会のウェブサイトの「演目の紹介」のページがまだ舞囃子のバージョンになっていません。)

私は仕舞『黒塚』を舞う予定です。
舞囃子『花月』と仕舞『清経キリ』、『鐘ノ段』、『篭太鼓』、『玉ノ段』、『八島』、『西王母』の地謡にもつく予定です。
(『鐘ノ段』、『玉ノ段』については、近日中に名古屋春栄会のウェブサイトの「演目の紹介」のページに追加する予定です。)

あー、謡をたくさん覚えないといけない!


theme : 能楽
genre : 学問・文化・芸術

ハイビスカスの花

ハイビスカスの花が咲き始めました。

ベランダのハイビスカスの花が咲き始めました。
いつもの年ならば、5月の中旬には咲き始めているのですが、今年は少し遅め。
実は、室内からベランダに出した4月中旬に、オンシツコナジラミが大発生してしまい、薬を数回、散布したもののなかなか退治できないので、思い切って強めに剪定したため、花が遅くなったのだと思います。
オンシツコナジラミは黄色が好きなようなので、黄花のものは発生しやすいようです。

ハイビスカスの花


今日の名古屋は午前中は、雷を伴ったかなり強い雨。
午後からは雨もやんで、午後3時過ぎには日も照りだしました。
明日からは、また、暑くなりそうです。
写真は午前中に撮影したので、少し濡れています。

今日も一日自宅で静養。体調は大分回復しました。


theme : 樹木・花木
genre : 趣味・実用

宴曲(えんぎょく)

「宴曲」について、金春流宗家が

語っていらっしゃいます。

昨日(6月8日)の朝日新聞の夕刊文化に、金春流宗家金春安明師の記事が掲載されています。
その中に「宴曲」の話が出てきます。

「宴曲は早歌とも呼ばれ、謡曲の先駆をなした歌謡である。特に武家を中心にした宴席でのうたいものとして、室町時代末期頃まで歌い続けられたが、謡曲の流行などで途絶した。」(東京国立博物館で冷泉家所蔵の写本が展示されたときの解説文から引用)とのこと。
関心のある方は、ぜひ記事をお読みください。
なお、記事が掲載されている朝日新聞のサイトはasahi.comです。
また、金春流宗家金春安明師のブログは金春安明不定期日記です。

今日は、およそ1か月ぶりに稽古に行く予定でしたが、朝から体調が思わしくなく、昼過ぎからひどい頭痛に悩まされたため、稽古をお休みしてしまいました(決して、昼過ぎからの土砂降りの雨のため、サボったわけではありません)。

今日は、ブログの更新もお休みしようかと思っていましたが、夜になり、薬が効いてきたのか大分楽になったこともあり、また、昨日、今日から夜に更新すると記載したこともあり、金春安明師の記事について紹介することにいたしました。


theme : 能楽
genre : 学問・文化・芸術

ブーゲンビレアの花

ブーゲンビレアも咲いています。

昨日の名古屋は最高気温も30℃を超えて、真夏日でした。

実家のブーゲンビレアの鉢も咲き始めています。
ブーゲンビレアは、ブラジル原産で、学名もBougainvillea、日本名は、筏葛(いかだかずら)。


ブーゲンビレアの花



この1週間は、体調がすぐれなかったので、比較的調子の良い朝にブログを更新していましたが、体調も回復してきましたので、明日からは以前と同じ、夜の更新に戻りたいと思っています。


theme : 樹木・花木
genre : 趣味・実用

クジャクサボテン

クジャクサボテンの花が咲きました。

実家のクジャクサボテンの花が咲き始めていました。
白のクジャクサボテンは月下美人とそっくりです。
月下美人は夜に咲くので、知らない間に咲いてしまい、朝、気がついたときにはもう萎れていることがたまにあるようですが、クジャクサボテンは日中に咲くのでそういうことはさすがにないようです(クジャクサボテンは数日咲いているようですし…)。


クジャクサボテン



月下美人に比べると弱いですが、クジャクサボテンも良い香りがします。

のどは相変わらず痛いのですが、熱は下がったので、昨日から出勤しています。
今朝ものどは痛い……(職場では「はしか」ではないかと疑われる!)。


theme : サボテン・多肉植物・観葉植物
genre : 趣味・実用

枇杷の実

枇杷の実をもらいました。

実家の庭の枇杷の木になっていた実を3房もらいました。
20粒ほどあり、小粒ですが、食べてみると甘くておいしかったです。

枇杷の実


枇杷の実は種の部分が大きいので、食べるところがあまりないように感じます。
実家の枇杷の木には、花が咲く2月頃にはメジロがたくさんやって来て、蜜を吸っています。
あまりに大きくなりすぎ、部屋がほとんど日陰になってしまうので、昨年の暮にかなり強く枝を落としたため、今年はあまり生らなかったようです。

枇杷を読んだ句というと、
 磯の香に 峙つ山も 枇杷のころ(水原秋桜子)
 枇杷熟れて 古き五月の あしたかな(加藤楸邨)
 枇杷買ひて 夜の深さに 枇杷匂ふ(中村汀女)

などが思い浮かびます。

昨日は風邪をこじらせて、仕事も休み一日寝ていました。
もう大分良くなったので、今日は出勤できそうです。
昨日食べた枇杷の実のおかげと言いたいところですが、枇杷の葉や種はいろいろと効用があるようですが、実は特に効用はないようです。



theme : 果樹
genre : 趣味・実用

あじさいの花

あじさいの花が満開です。

実家のあじさいの花が満開でした。
ちょうど隣家との境界の石積みのところに植わっているので、毎年、知らない間に満開になります。


あじさいの花


あじさいを読んだ句としては、芭蕉の紫陽花や 藪を小庭の 別座敷」が有名です。
元禄7年5月。芭蕉の最後の旅を前に、子珊(しさん)の別座敷で開かれた送別の歌仙の際の発句です。
舞台となった子珊の別座敷もあまり手を入れていない庭だったと言われています。
私が好きなあじさいを読んだ句は、虚子の「紫陽花の 花に日を経る 湯治かな」です。
花の色の移り変わりで日を数えるとうのは素敵です。
私も、あじさいの花の色が変わっていくのがわかるぐらいの日数、湯治に行ってみたいものです。

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柏葉アジサイ

柏葉アジサイが咲き始めました。

実家の庭で柏葉アジサイが咲き始めました。
葉が柏に似ているところからこう名付けられたようです。
北米原産で普通のアジサイと同じ「ゆきのした科」の植物だそうです。
学名は、Hydrangea quercifolia。

柏葉アジサイ


白い花が庭を明るくするので、梅雨の季節にはぴったりの花だと思います。
名古屋も梅雨入りが近づいてきました。


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夢十夜・第五夜

今日は第五夜です。『走れメロス』のような話と巷間言われていますが、大団円で終わらないので、少し違うのではないかと思います。

私は、昨日、風邪を引いて、熱が少しあったため、一日寝ていました。
風邪薬のせいか、すぐに眠くなるのですが、眠りが浅いためか、『夢十夜』を再読しているせいか、たくさん夢を見ました。

ご紹介している『夢十夜』は漱石が実際に見た夢なのでしょうか?
今日でちょうど半分紹介し終わったので、しばらくお休みしようと思っています。

『夢十夜・第五夜』(夏目漱石)


こんな夢を見た。
何でもよほど古い事で、神代に近い昔と思われるが、自分が軍をして運悪く敗北たために、生擒になって、敵の大将の前に引き据えられた。
その頃の人はみんな背が高かった。
そうして、みんな長い髯を生やしていた。
革の帯を締めて、それへ棒のような剣を釣るしていた。
弓は藤蔓の太いのをそのまま用いたように見えた。
漆も塗ってなければ磨きもかけてない。
極めて素樸なものであった



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夢十夜・第四夜

今日は、第四夜です。この話も何を言いたいのか、よくわかりません。
まぁ、夢に落ちは必要ないということなのでしょうか?

『夢十夜・第四夜』(夏目漱石)


広い土間の真中に涼み台のようなものを据えて、その周囲に小さい床几が並べてある。
台は黒光りに光っている。
片隅には四角な膳を前に置いて爺さんが一人で酒を飲んでいる。
肴は煮しめらしい。
爺さんは酒の加減でなかなか赤くなっている。
その上顔中つやつやして皺と云うほどのものはどこにも見当らない。
ただ白い髯をありたけ生やしているから年寄と云う事だけはわかる。
自分は子供ながら、この爺さんの年はいくつなんだろうと思った。


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夢十夜・第三夜

今日は第三夜です。『夢十夜』の中では、おそらく第三夜が、最も有名な話です。
この話の最後の方で、「今から百年前文化五年の辰年」というフレーズがあります。これは、第一夜の女の言葉「百年待っていて下さい」に対応しているのでしょうか。
なお、『夢十夜』は明治41(1908)年の7月25日から8月5日まで朝日新聞で連載されたものなので、その100年前は文化5(1808)年になります。

『夢十夜・第三夜』(夏目漱石)

こんな夢を見た。
六つになる子供を負ってる。
たしかに自分の子である。
ただ不思議な事にはいつの間にか眼が潰れて、青坊主になっている。
自分が御前の眼はいつ潰れたのかいと聞くと、なに昔からさと答えた。
声は子供の声に相違ないが、言葉つきはまるで大人である。
しかも対等だ。



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