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2020 / 05
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今日は、ビスケットの日だそうです。

今日の名古屋は、風は強かったですが、日差しには春が感じられる一日でした。
ビスケットというと思い出す新美南吉の童話「正坊とクロ」を紹介します。

新美南吉(本名:渡辺正八)は、大正2(1913)年7月に愛知県半田市に生まれます。そして、大正10(1921)年、8歳のときに母の生家の養子となり、新美に姓が変わります。
昭和6(1931)年に、半田中学を卒業し、小学校の先生になるために師範学校を受験しますが、体が弱くて入学できず、母校の半田第二尋常小学校の代用教員となります。しかし、8月には退職します。
正坊とクロ」は、『赤い鳥』の昭和6年8月号に、南吉が初めて入選し、掲載された童話です。南吉が18歳のときの作品です。


『正坊とクロ』(新美南吉)



 村むらを興行して歩くサーカス団がありました。十人そこそこの軽業師と、年をとった黒くまと馬二とうだけの小さな団です。馬は舞台に出るほかに、つぎの土地へうつっていくとき、赤いラシャの毛布などをきて、荷車をひくやくめをもしていました。
 ある村へつきました。座員たちは、みんなで手わけして、たばこ屋の板かべや、お湯屋のかべに、赤や黄色ですった、きれいなビラをはって歩きました。村のおとなも子どもも、つよいインキのにおいのするそのビラをとりまいて、おまつりのようによろこびさわぎました。
 テントばりの小屋がかかってから、三日めのお昼すぎのことでした。見物席から、わあっという歓声といっしょに、ぱちぱちと拍手の音がひびいてきました。すると、ダンスをおわったお千代さんが、うすももいろのスカートをひらひらさせて、舞台うらへひきさがってきました。つぎは、くまのクロが出る番になっていました。くまつかいの五郎が、ようかん色になったビロードの上着をつけ、長ぐつをはいて、シュッシュッとむちをならしながら、おりのそばへいきました。
「さあ、クロ公、出番だ。しっかりたのむよ」
と、わらいながらとびらをあけましたが、どうしたのか、クロはいつものように立ちあがってくるようすが見えません。おやと思って、五郎がこごんでみますと、クロはからだじゅうあせだくになって、目をつむり、歯をくいしばって、ふといいきをついているのです。
「たいへんだ、団長さん。クロがはらいたをおこしたらしいです」
 団長もほかの座員も、ドカドカとあつまってきました。五郎は団長とふたりがかりで、竹の皮でくるんだ、黒い丸薬をのませようとしましたが、クロはくいしばった口からフウフウあわをふきふき、首をふりうごかして、どうしても口をひらきません。しばらくして、ピリピリッとおなかのあたりが波をうったと思いますと、クロは四つんばいになって、おりの中をこまのようにくるいまわりました。それから、わらのとこにドタリとたおれて、ふうッと大きくいきをふいて、目をショボショボさせています。
 見物席のほうからは、つぎの出しものをさいそくする拍手の音が、パチパチひびいてきます。そこでとうとう、道化役の佐吉さんが、クロにかわって、舞台に出ることにしました。そのとき、だれかが、
「正坊がいたら、薬をのむがなあ」
と、ためいきをつくようにいいました。団長は、
「そうだ。お千代、正坊をつれてこい」
と、ふといだみ声でめいじました。お千代は馬を一とうひきだして、ダンスすがたのまま、ひらりとまたがると、白いたんぼ道を、となり村へむかってかけていきました。




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クリスマスの短編の2作目も竹久夢二の童話です。

…と言っても、この作品が、クリスマスの話というわけではありません。しかし、作品の中で大きな役割を果たす映画「街の子」(作品のタイトルにもなっています)のクリスマスのシーンが印象的なので、クリスマスの短編として紹介することにしました。

映画の登場人物の少年ジャッキイにあこがれる春太郎
映画やテレビドラマ、小説や漫画の主人公にあこがれて、自分がその主人公になったような気になることは、子どもの頃、誰もが経験したことだと思います。
そんな子どもの心の動きが、率直に描かれている作品です。


街の子』(竹久夢二)


それは、土曜日の晩でした。
春太郎は風呂屋から飛んで帰りました。春太郎が、湯から上って着物をきていると、そこの壁の上にジャッキイ・クウガンが、ヴァイオリンを持って、街を歩いている絵をかいた、大きなポスターが、そこにかかっているのです。

                   十二月一日より
ジャッキイ・クウガン 街の子
                   キネマ館にて

と書いてあるのです。それを見た春太郎は、大急ぎで帯をぐるぐる巻きにして、家へ飛んでかえりました。
春太郎は、ジャッキイ・クウガンが大好きで、ジャッキイの写真はたいてい見ていました。だからもう今では、ジャッキイの顔を見ると、長い間のお友達のような気がするのでした。


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もうすぐクリスマス。

街の景色は、すっかりクリスマスです。今日からクリスマスの短編を紹介します。
今日は、竹久夢二の「クリスマスの贈り物」です。

竹久夢二(たけひさ ゆめじ)は、明治17(1884)年生まれ。数多くの美人画を残しており、大正浪漫を代表する画家です。また、詩人としても知られ、なかでも詩「宵待草」には、多忠亮(おおのただすけ)により曲が付けられて全国的な愛唱曲となり、一世を風靡しました。
また、童話も書いています。
この作品は、昭和2(1926)年に発表された童話集「」に収録されています。

昭和初期というのに、お正月ではなく、クリスマスを指折り数えて待つという設定に少し驚きました。


クリスマスの贈物』(竹久夢二)


「ねえ、かあさん」
みっちゃんは、お三時のとき、二つ目の木の葉パンを半分頬ばりながら、母様にいいました。
「ねえ、かあさん」
「なあに、みっちゃん」
「あのね、かあさん。もうじきに、クリスマスでしょ」
「ええ、もうじきね」
「どれだけ?」
「みっちゃんの年ほど、おねんねしたら」
「みっちゃんの年ほど?」
「そうですよ」
「じゃあ、かあさん、一つ二つ三つ……」とみっちゃんは、自分の年の数ほど、テーブルの上に手をあげて、指を折りながら、勘定をはじめました。




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kinkun

Author:kinkun
名古屋春栄会のホームページの管理人

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